2008年版 中小企業白書のポイント Part1
〜生産性向上と地域活性化への挑戦〜

 中小企業庁が毎年発表している「中小企業白書」2008年版がこのたび公表されました。
 本白書は、第1部「2007年度における中小企業の動向」、第2部「中小企業の生産性の向上に向けて」、第3部「地域経済と中小企業の活性化」の3部で構成されております。
 本誌では、3回に亘りその概要についてご紹介致します。なお、詳細については次の中小企業庁のホームページをご覧下さい。(http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/index.html)

第1部 2007年度における中小企業の動向
 2007年度の日本経済は、緩やかな景気回復が継続したものの、年度末に足踏み状態となり、また、地域間や業種間で景況感にばらつきが見られた。とりわけ、原油価格の高騰や改正建築基準法の施行後の建築着工件数の減少は、中小企業の収益に大きな影響を与え、足下では中小企業の業況が悪化してきている。

1 日本経済の動向

○2007年度の日本経済は、緩やかな景気回復を続けたものの、年度末に足踏み状態となった。
実質GDPと鉱工業生産の推移
資料:内閣府「国民経済計算」、経済産業省「鉱工業生産指数」
(注)1.実質GDPは2000暦年連鎖価格GDP。
2.鉱工業生産指数は2000年を100としている。
○原油価格の上昇により収益が圧迫されている中小企業は9割を超える。また、コスト上昇分を自社の製品・サービスの価格に全く転嫁できていないとする中小企業は6割にのぼる。
原油価格上昇による中小企業への影響
資料:中小企業庁・全国中小企業団体中央会・(財)全国中小企業取引振興協会「原油価格上昇による中小企業への影響調査」

2 中小企業の景気動向
中小企業の業況判断DIは、2002年第1四半期を底に、製造業が主導する形で改善を続けてきたが、2007年になって弱い動きが続いている
企業の業況判断DIの推移
資料:日本銀行「全国企業短期経済観測調査(短観)」
(注)1.調査対象は約10,000社。
2.業況判断DIは、業況が「良い」と答えた企業の割合(%)から、「悪い」と答えた企業の割合(%)を引いたもの。
中小企業の倒産件数は、現在の景気回復局面に入った後の概ね3年間は前年同期比で減少していたが、2006年頃から増加に転じている。
中小企業倒産件数と増減率
資料:(株)東京商工リサーチ「倒産月報」
(注)2000年以前は資本金1億円未満の企業を中小企業とする。
○資本金1千万円未満の企業の利益率は低迷しており、資本金1億円以上の大企業との差は拡大している。
規模別売上高経常利益率の推移
資料:財務省「法人企業統計年報」
○2002年以降、有効求人倍率は上昇、失業率は低下を続けてきたが、2007年後半から、有効求人倍率は若干の低下傾向を示し、失業率の低下も足踏み状態となっている。
有効求人倍率と完全失業率の推移
資料:総務省「労働力調査」、厚生労働省「職業安定業務統計」
○2007年以降、小規模な事業所を中心に新規求人数は減少している。
規模別新規求人数の推移
資料:厚生労働省「職業安定業務統計」
(注) 全国の公共職業安定所において、期間中に新たに受けた求人数。求人にはパートタイム労働者を含む。

3 日本経済の構造変化に直面する中小企業
○中小企業の利益率の低迷の背景には、原油価格高騰や改正建築基準法の施行後の建築着工件数の減少などの外生的ショックに加えて、中小企業が大きく依存する民間消費需要の伸び悩みがあると考えられる。
主な景気回復局面における民間消費の推移
資料:内閣府「国民経済計算」
(注)いざなぎ景気については、1965年10-12月期から1970年7-9月期の値、バブル景気については1986年10-12月期から1991年1-3月期の値、今回の景気回復局面については2002年1-3月期から2007年10-12月期の値を用いている。
○消費に力強さがない背景には、家計部門の雇用者所得が伸び悩んでいることがある。賃金指数は1997年以降2004年までおおむね下降傾向が続き、2005年に持ち直したが、2007年は前年比0.3%減少している。
賃金指数の推移
資料:厚生労働者「毎月勤労統計調査」
(注)賃金指数は、就業形態計(30人以上)、現金給与総額。2005年を100とした指数。
○所得環境の弱さの背景としては、(1)景気回復局面において失業率が改善したものの、歴史的に見ればなお高い水準にあり、労働市場での賃金上昇圧力が弱いこと、(2)正規雇用から非正規雇用への人員シフトが生じ、賃金の押し下げ要因として働いていること等の要因が考えられる。
非正規雇用者比率規模別推移
資料:総務省統計局「労働力調査特別調査」(2001年まで)/労働力調査詳細集計(2002年以降)」
(注)1.労働力調査特別調査データは各年2月調査を用いた。労働力調査データは、各年1〜3月の平均値を用いた。
2.非農林業雇用者を集計した。
3.非正規雇用者とは、「パート」、「アルバイト」、「労働者派遣事業所の派遣社員」、「契約社員・嘱託」、「その他」の合計としている。
4.非正規雇用者比率=非正規雇用者÷(正規の職員・従業員+非正規雇用者)×100
○日本の輸出入額は拡大を続けてきているが、主として中小企業が製造している製品の輸出入の推移を見てみると、輸入超過の状態が続いている。
中小企業性製品の輸出入額の推移

資料:中小企業庁「規模別輸出額・輸入額」
(注) 中小企業性製品とは、日本標準産業分類細分類で従業員数300人以下の中小事業所の出荷額が70%以上(2000年基準)を占めるものを指す。
○日本の中小企業数は減少を続けてきており、2004年から2006年へかけても我が国の中小企業数は433万社から420万社へと減少した。
企業の開廃業率(企業数ベース)と企業数の推移

資料:総務省「事務所・企業統計調査」再編加工
(注)1.1991年までは「事業所統計調査」、1994年は「事業所名簿整備調査」として行われた。
2.ここでの中小事業の範囲は以下の通り。
・1996年以前は常用雇用者300人以下(卸売業は100人以下、小売業、飲食店、サービス業は50人以下)、又は資本金1億円以下(卸売業は3,000万円以下、小売業、飲食店、サービス業は1,000万円以下)
・1999年以降は常用雇用者300人以下(卸売業、サービス業は100人以下、小売業、飲食店、は50人以下)、又は資本金3億円以下(卸売業は1億円以下、小売業、飲食店、サービス業は5,000万円以下)
以下次号


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