企業の早期再建を促進する民事再生法のあらまし


 昨今、景気低迷が続く中、倒産或いは経営危機に陥っている企業も少なくありません。
 こうした企業の早期の再建を図る目的で「民事再生法」が平成12年4月1日から施行されました。
 これまでの倒産処理法の制度的不備や欠陥を補足し、再建型倒産処理手続きをを定めたこの法律は、中小企業にとって早期に企業再建しやすい制度となっております。概要は次のとおりです。

1.制定の趣旨

 これまで会社の倒産処理に適用されてきたものとしては「破産法」、「和議法」、「会社整理」、「特別清算」、「会社更正法」の5法制があります。
 この倒産5法制に共通することは、倒産者が支払不能(支払停止も支払不能と推定)若しくは債務超過の状態であることが前提という考え方に基づくものでした。
 しかし、民事再生法は、行き詰まった会社が有する資産の劣化を食い止め、従業員を離散させないままの状態で救済し、しかも債務者が、経営権や財産管理処分権を失うことなく、債権者の多数の同意による権利変更で、早期に企業を再建させることを目的に制定されました。
 したがって、従来の和議法(民事再生法施行に伴い、廃止)では、再建までに2〜3年くらい要していましたが、民事再生法では、6ヶ月くらいを目途に考えられております。
 そこで、今回は民事再生法の特徴を従来の倒産処理法と比較してみることにします。

民事再生手続きの流れ

2.民事再生法の主なポイント

★すべての法人・個人事業者が利用対象者となります
 対象となる債務者については法律上何ら限定されていませんので、すべての法人・個人事業者が利用対象となっております。

★手続き開始原因が緩和されました
      〜早期の申立てが可能となります〜
 従来の倒産処理法では、支払が滞ってから申し立てることになっていますが、民事再生法では、次の申立て原因((1)又は(2))が存在すれば、債務者は支払不能、債務超過、支払停止になる前に申立てができることになりました。
 (1)債務者に破産原因の事実が発生するおそれがある場合
 (2)債務者が事業の継続に著しく支障をきたすことなく弁済期にある債務を弁済することができない場合
 なお、(1)の原因が存在する場合には、債権者も申立てすることができます。

★包括的禁止命令などで債務者の財産を保全します
 手続き開始の申立てから手続き開始決定がなされるまでの間、再生債務者の財産を保全するため、裁判所は「保全処分」が出せるようになりました。
 この保全処分には、すべての再生債権者に対し、再生債務者財産への強制執行などの禁止を命ずる「包括的禁止命令」や担保権者に対する競売手続き中止命令などがあります。

※再生債権者とは?
 再生債務者に対して再生手続き開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権を有している者をいいます。

★担保権を消滅させて事業を継続できます
 担保権消滅請求制度は、わが国の従来の倒産処理法制上なかった、全く新しい制度です。
 これは、再生債務者が現時点での担保目的物(例えば、工場等)の価値を金銭で裁判所に納めることによってすべての担保権を消滅させ、再生債務者の事業の継続に不可欠な財産を確保して再建を強力に進めることができるものとして、その活用が期待されています。

★裁判所の許可で営業譲渡ができます
 再生手続きの開始決定があった後は、再生債務者又は管財人は裁判所の許可を得て、再生計画によらずに営業権又は事業の全部又は一部を譲渡することができます。
 これは、会社更正法と異なり、再生手続きにおいて継続企業の価値が劣化しないうちに迅速にM&A(買収・合併)処理による再建を可能にする或いは、債権者に対する弁済率向上にもつながるものとして選択できるようになっております。

★再生計画案の可決要件が緩和されました
 再生計画案については、債権者集会に出席した再生債権者数の過半数で、かつ、議決権を行使することができる再生債権者の総債権額の2分の1以上(和議法では4分の3以上)の賛成で可決できるようになり、緩和されました。

★裁判所が最後まで履行を監視します
 和議法では、債権者集会で決議されれば、その段階で裁判所の手を離れることになりますが、民事再生法では、履行完了まで裁判所が監視します。
 裁判所が再生計画を認可した後、債務者が計画の履行を怠った場合、不履行による破産宣告がなされます。このようなことがなく、計画が完全に履行されると再生手続き全体が終了することになります。

★再生手続きで企業の早期再建、産業の再活性化を
 以上のことから、再生手続きは従来の倒産5法に比べて、中小企業にとって早期に再建しやすく、また事業内容に応じていろいろな手段が講じやすい手続きといえます。
 また、経営不振等に陥った事業者にとってはその事業成果を解体することなく維持され、事業の再生がこれまでより容易に図られることは、産業の再活性化につながるものとして、その適切な運用が期待されます。

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