ヨーロッパの街から学ぶべきもの
平成11年度商店街国際化研究会に参加して
業務部長  斉藤 信郷

 全国商店街振興組合連合会主催の「平成11年度商店街国際化研究会欧州商業視察」に本会業務部長斉藤信郷が参加しました。
 そこで、その視察研修の概要を、今月号と3月号の2回に分けて皆様にご紹介する事にいたしました。

 この度、全国商店街振興組合連合会主催の「商店街国際化研究会欧州商業視察」に参加し、大変有意義な経験をする事ができた。
 自分自身の中で、チェコ、オーストリア、ドイツ各国の商業特に商店街事情をつぶさに視察し、私たちの商店街との比較の中、今後の商店街活動にひとつでも参考になるものを見つけてこようとの思いで参加した。

訪問国チェコ・視察都市プラハ
—歴史と文化を守りながらの都市開発—
 ヨーロッパは、歴史と文化の街との意識があったが、最初に訪れたチェコのプラハでは、その歴史的な街並みに圧倒された。
 街自体が世界遺産に指定されているとは聞いていたが、ホテルの窓から見える街並みは中世ヨーロッパ(絵はがき程度の知識しかなかったが)そのものであった。
 プラハでの視察先であったショッピングアーケードは、外観は中世の建物の雰囲気(建物の外観をそのままにしての開発。プラハ市の基本的な考え方。)をそのまま残し、その内部を現代的に改装した建物であった。テナント形態の商店が並び、販売されている商品も国内と遜色ないものと感じた。
 建物管理をしている方からレクチャーを受けたが、説明者の話によると「我々は、建物管理会社ではなく企画会社である」とのこと。中に入っている各テナントの経営のあらゆる相談を受けながら、建物を運営している機関であった。
 テナントの会計、金融、マーケティングからショッピングアーケード全体のイメージを守りながらのイベントの開催等、建物全体の運営、あえて言えば建物全体の経営を一手に引き受けている機関であると感じた。
 今我々の当面の課題である中心商店街の活性化、特にTMOの活動についても、この考え方、つまり、建物所有等の管理面から一歩踏み込んだ建物全体のマネージメントを行う機関としての活動が必要ではないのかと気づいた。街の景観を守りながら、開発する建物にもっと付加価値を付ける為に、入居者全体の経営部分までもトータルとしてマネージメントすることが大切と感じ、それが成功への道ではないのだろうかとつくづく思った。遠い国であり、又、自由主義経済に参加してまだ10年の国からTMOの基本を学ぶとは、考えもしなかったことであった。
 プラハの旧市街地、世界的に有名なカレル橋、プラハ城と見て回ったが、歴史と文化に圧倒されっぱなしのプラハの街であった。参加者の誰かが、「こんなにある中世の素晴らしい建物が私の商店街にひとつでもあったら、お客さんをいくらでも集められるのになあ」とつぶやいているのがとても印象的であり、私も同じ事を心の中でつぶやいた。

訪問国オーストリア・視察都市ウィーン
—街の程良い暗さが印象的—
 ふたつめの視察先は、オーストリアのウィーンであった。プラハからは60人(多分それぐらい)乗りの双発プロペラ機での移動であり、国際線がプロペラ機なのと言うことで参加者一同驚きの声を上げたが、それだけ隣の国が近いと言うことでもあり、ヨーロッパの歴史の中での悲劇(国を取ったり取られたり)を考えれば十分に実感できる体験であった。
 ウィーンへの到着が夜になり、当日は夕食だけの日程であったので夕食後、仲間と夜の街に出てみた。最初の感じで、街並みがものすごく暗いなと感じ、人もそんなに歩いていないしこれで中心の商店街なのかなと非常な驚きを感じた。街中には、マクドナルドもあったし中からジャズが聞こえるパブ的なレストランもあったが我々日本人の感覚ではあまりにも寂しい感じのする街並みであった。
 最初の印象がそうであったが、用事を済ませて(ひととおり遊んでだが)の帰り道、その暗さが何とも街並みとマッチし、素晴らしい雰囲気を街全体に醸し出していることに気がついた。街の暗さが心地いいのである。一緒にいた仲間にも話したところ同感との答えを得、街を美しく見せる方法には暗さを強調することもあるのだなと言う事をつくづく知らされた。
 我々の商店街のけばけばしいばかりの明るさ、まとまりのない看板類、これらがいかに街を破壊しているのかとつくづく感じさせられた出来事であった。次の日の昼この商店街を歩いたが、この通りはウィーンのオペラ座前の通りで、まさしく中心の商店街であった。
 歴史と文化の街ウィーンと我々の街では比較にならないのではとの意見もあるとは思うが、これからの街づくりには「程良い暗さ」の大切なことを知らされ、大変に参考になった。
 翌日、ウィーンの商工会議所で市内の商店街の活動についてレクチャーを受けたが、会場であった講堂の壁に掲げられていた歴代の会頭(多分そうだと思うのだが)の肖像が全て絵画であったのがものすごく印象的であった。オーストリアのウィーンはハプスブルグ家の本拠であり、まさに歴史と文化の地であることをつくづく思い知らされた。

…次号へつづく
(写真:プラハ城)

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