商品の多様化が進み、様々な品物が溢れている今日においても、消費者の購買意欲を掻き立て、変わらぬ価値と安心感を約束する「ブランド・イメージ」。物が溢れ、とかく価格差だけで商品の優劣が判断されがちな現在、商品の特性や安心感・付加価値などを消費者に正しく理解してもらうのに大きな効果をもつ戦略のひとつである。
ブランドの構築には、長い年月とコストをかけて商品の信用を消費者心理に植付けていく作業が必要であるが、組合にとってその契機となったのは昭和57年に生き残りを賭けて取り組んだ県の地場産業総合振興事業だろう。時代のニーズから乾麺の需要が衰退していた当時、消費嗜好に適した全く新しい麺の創作に着手したのである。当該事業で当時日本では生産されていなかった製麺機を本場韓国から輸入、試作を繰り返すとともに消費者の嗜好調査を徹底し、半乾燥冷麺の商品化を実現した。その後、岩手県内の冷麺ブームが追い風となり売上高が飛躍的に増加、その需要に対応するべく平成2年には冷麺工房(共同工場)を設置した。その後も、再三にわたる消費者調査を通じて製品改良を繰り返し、首都圏と県内向けに二本立てたきめ細やかな販路開拓、流通業者や飲食店業界と連携したPR等を展開し、「盛岡冷麺」の知名度の向上に向けて取り組んでいる。
ちなみに息の長いブランド・イメージが確立されていく過程では、一般的に、対象となる商品は「市場浸透速度」が比較的遅く、「リピート率」がかなり高くなるという特徴を示すといわれている。「盛岡冷麺」はこのような特徴を見事に示しているのではないだろうか。