岩手 バックナンバー


夕暮れの「俳句あんどん」
協同組合湯本商店会
理事長
柳沢 安雄
組合員数
20名
出資金
9,064,000円
住所
和賀郡湯田町湯本30-40-1
電話
0197-48-2230

◆自分たちの競争力を見つめ直しての経営戦略
 奥羽山脈の山懐に抱かれた和賀川の清流に沿って旅館が立ち並ぶ湯本温泉は、江戸時代−万治元年に発見されたと伝えられ、俳聖・正岡子規が投宿したことでも知られています。また、季節の移ろいがはっきりと感じられ、四季折々の自然が楽しめる名所としても有名です。
 近年、この湯本温泉で「協同組合湯本商店会」を中心とする新たな動きが活発になっています。
 「協同組合湯本商店会」は、温泉旅館を中心に商店・飲食店で構成する、昭和34年に設立された県内でも有数の歴史ある組合のひとつですが、全国レベルでの観光地低迷の例に漏れず、客数の減少により看板を降ろす店が後を絶たない状況にありました。
 このような状態を打破するため、従来の「待ち」の姿勢から、湯本に根差した「四季」「自然」「文芸」を結びつける強力な集客の仕掛けづくりを求める気運が高まります。
 その契機となったのは、組合の共同広告事業を担当する組合青年部のメンバーです。世代交代が進んだ平成13年、青年部の構成員が新たに入れ替わるとともに、湯本への深い愛着を胸に、この地で商売をしていく決意を固めたメンバーは、これまで組合を支え続けてきた組合員と一致団結し、「湯本温泉活性化」をスローガンとして、積極的な活動を開始。地域が有する「四季」「自然」「文芸」という財産を見つめ直し、かつて正岡子規が愛し多くの俳人を生み出した、四季折々の「季語」情緒が楽しめる「俳句の里」としてのイメージ戦略を、さらに強力に打ち出します。

◆活性化に向けた青年部の取り組み
 俳句愛好家の集客を戦略のフィールドに設定した組合は、全国で300万人とも言われる俳句人口に訴える具体的な取り組みを次々と展開していきます。
まず、本会の助成事業による「行灯式手づくり看板」に着手。温泉地としての情緒づくり、店頭看板の統一化による景観の整備を目的としたこの取り組みは、その作成を地元の業者とともに行うことで、これから進む方向性に対する町ぐるみでの意思統一の形成に大きく貢献しました。
 この「行灯式看板」は、観光客の評判はもとより地元の住民にも好評を得て、更なる進化を遂げていきます。湯本では、湯本温泉協会が主催する俳句大会が毎年7月に開催されており、「行灯式看板」による景観整備に手応えを得た組合は、大会で入選した俳句を行灯に書き入れ、年間を通じて街区に展示するというアイディアを実行に移します。
 湯本の商店街は、店と民家が混在しているという特徴を持ち、路地裏に一歩踏み出すと、排水溝から立つ湯煙が何とも言えない温泉情緒を醸し出しています。そこで、地域で暮らす人々に強く働きかけ、好評を得た「行灯式看板」をベースとする「俳句あんどん」を、温泉街の景観統一のため、各民家に門灯として設置する協力を仰ぎます。この試みは、俳句愛好家たちの関心を大いに刺激して、大会への参加者を増加させました。
 平成16年度には、「湯けむり俳句ing」と名付けたホームページを開設。Webを通じて湯本温泉を全国に広く情報発信しました(中央会支援事業を活用)。今年に入っては、「峠の俳句」コンテスト(湯本観光協会主催)を企画・開催。インターネットなどを通じて、入選60句を「俳句あんどん」として街区に展示することを広告し、俳句を募集しました。俳句の応募は、締切前の段階で全国各地から数千件を超えているとのことです(17年度も中央会支援事業を活用)。
 現在は、全国から寄せられたデータを今後の財産とするとともに、集客はあくまでも手段であるとの共通認識のもと、商業者とそこで暮らす住民の連携を深めながら、温泉を訪れた人々に商店街が満足とサプライズを提供することで、町全体が活性化するという基本コンセプトの実現に向けて、個店それぞれの競争力を高めるべく、次々と新たな企画に着手しています。

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