改正組合法と組合会計基準について(2)

 会計処理等に関する諸規定を有しなかった「中小企業等協同組合法」等を根拠法とする組合は、これまでは「企業会計原則」と「中小企業等協同組合会計基準」(以下、「組合会計基準」)に準拠し、決算関係書類を作成してきましたが、平成19年4月の改正法により、省令(「中小企業等協同組合法施行規則」等、以下、「施行規則」)に決算関係書類の作成に関する条文規定が明記されたことで、その内容を遵守し、決算関係書類を作成する義務が生じることとなりました。
 決算関係書類について企業会計(会社計算規則等)と異なる点は、財産目録、剰余金処分案又は損失処理案の作成が必要とされる点です。その作成にあたっては「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の会計の慣行をしん酌しなければならない。」と規定されており(施行規則45条)、組合独自の会計が必要とされる面をカバーする「組合会計基準」は、「その他の会計の慣行」に内容が包含されていると解されています。
 改正点の多くが、平成18年5月に施行された「会社法」の規定に基づき定められた「会社計算規則」を準用する形で変更が加えられていることもあり、「組合会計基準」もこれに応じる形で改訂が加えられ、省令では触れられていない組合特有(剰余金の配当、持分の計算、加入金の処理、事業別会計等)の会計処理についても配慮されたものとなっています。また、企業会計原則と同様に国際会計基準の要請に応えるよう改訂されています。
 今回は、「組合会計基準」で示されている財産目録と貸借対照表の変更点について掲載します。
 なお、経過措置の適用がなく、現行で適用されている区分・表示もありますので定款変更許可申請や決算関係書類作成の際には、事前に連携組織支援部又は大館・横手支所にご相談ください。

非出資商工組合を除く、一般組合が作成する財産目録及び貸借対照表に係る留意事項。

◆財産目録 56条
 財産目録は、まず資産の内容を示し、ついで負債の内容を示し、その差額を正味資産として表示するものです。従来から会社においては、財産目録はその計算書類等(決算関係書類)には含められていませんが、組合では必須の決算関係書類となっています。
 財産目録に付すべき価額については、従来と同様に取得原価基準に拠ることとされ、また「次に掲げる部に区分して表示しなければならない。」と定められました。
一 資産の部
二 負債の部
三 正味資産の部

 財産目録に関しては、差引正味財産が「正味資産の部」に区分・表示されることとなった点を除けば、大幅な変更点はありません。

 ここでの留意事項は、持分払戻しの際の組合財産の評価は、時価に基づき計算するため、定款の持分払戻し規定が出資額限度の組合においても、時価評価による組合正味資産の価額が、上記の取得価額に基づき計算された組合正味資産を下回る場合(土地の時価評価額が、取得価額以下となった場合など)には、財産目録の脚注に時価評価額とその計算根拠等を表示する必要があることです。
 また、勘定科目については、貸借対照表と同一科目を使用しなければなりません。

◆貸借対照表 57条〜69条
 貸借対照表は、継続的な会計帳簿の記録から誘導的に作成されるもので、一定の日時における組合の財政状態を明らかにする財務諸表で、貸借対照表に記載される資産の価額は、原則として当該資産の処分価額ではなく、取得価額に基づき計上され、貸方には組合資本の調達源泉である負債(他人資本)及び純資産(自己資本)が、借方には資本の運用状況である資産が計上されます。
 変更点としては、脱退者持分の払戻しに際して出資金の減資差益が生じた場合、改正前は「資本準備金」の区分に「減資差益」として計上していましたが、今後は、「資本剰余金」「その他資本剰余金」の区分に「出資金減少差益」として計上表示することになります。
 これまで「教育情報費用繰越金」は、剰余金処分確定時に積立てられ、期中においては「負債の部」に計上されてその年度の期末に「教育情報費用繰越金戻入勘定」に振り替えられて期末残高がなくなり、決算時の貸借対照表には計上されることはありませんでしたが、今回の改正で「純資産の部」の「その他利益剰余金」に区分されることになりました。このため、取り崩しに関しても従来のように期末に全額戻入をする必要がなくなり、当事業年度で発生した教育情報事業費との関連で任意に取り崩せることになりました。
 また、会社計算規則で「評価・換算差額等」の区分が設けられたことにより、施行規則でも、同様の「評価・換算差額等」の区分が新設されましたが、この区分は土地、その他有価証券に時価を付す場合に使用されるものであり、ほとんどの組合ではこの区分を使用することはないと思われますが、この区分の「脱退者持分払戻勘定」は、組合員に対する持分払戻しの定款規定が「全額払戻」である場合、土地評価益を加算して算出された持分払戻額のうち、出資金を超える額が、純資産中の資本剰余金、利益剰余金の合計額を超える場合に生じる差額をこの勘定で処理することになります。特に「資本の部」として表示されていた箇所が「純資産の部」として表示されることとなり、その区分が「I組合員資本」と「II評価・換算差額等」に分けられ、内容にも大幅に変更されているため、注意が必要です。

貸借対照表 純資産の部における区分・表示
変更された区分・表示項目に注意!


作成上の留意事項として
・単位の円表示に代えて¥マークを使用することができる。
・年度末に脱退する組合員がある場合は、当該出資金を未払金に計上し、期末出資金に対する出資口数を事業報告書の期末の出資口数に合致させ、期末出資金について変更登記を行う必要がある。
・特定引当資産については、信託預金、定期預金等その資産の実在を示す科目をもって掲記し、引当資産である旨を脚注に表示することができる。
・減価償却費、減損損失について、間接法を採用している場合には、個々の有形固定資産の取得価額から控除する形式で表示する。
・貸倒引当金は、個々の主たる勘定ごとに控除して示すことができる。
・繰延税金資産及び繰延税金負債(長期を含む。)の科目については、税効果会計を適用した場合に使用する。
・未払込出資金のない組合は、払込出資金、未払込出資金の表示をせずに、出資金のみの表示でよい。
・脚注事項は、できるだけその内容が明らかになるように記載すること。
・式は、勘定式、報告式は問わない

 施行規則には、会社法の会社計算規則と異なり、注記(表)に関して規定されていないことから注記表の作成に代えて、各決算関係書類ごとに注記することができます。
◆重要な会計方針の注記
 1. 資産の評価基準及び評価方法
 2. 固定資産の減価償却の方法
 3. 引当金の計上基準
 4. 収益及び費用の計上基準
 5. その他計算書類の作成のための基本となる事項
◆会計方針の変更
 1. 会計処理の原則又は手続きの変更
 2. 表示方法の変更



Copyright 2008 秋田県中小企業団体中央会 http://www.chuokai-akita.jp/