2004年版 中小企業白書のポイント〈その2〉


2 グローバリゼーションと中小企業
(1)グローバリゼーションの国内生産拠点への影響
○ 中小企業の海外進出企業は漸増傾向。また、製造業においては、その割合が着実に増加
○ 海外生産増加企業では製造部門従業者を減少。他方で非製造部門の従業者は日本に輸入される海外生産品の販路確保等のため増加。海外生産増加企業に限れば、本社の従業者数が減らない可能性もある。
○ 研究開発への取組・自社ブランドの利用は、海外生産の増加と同時に国内生産も増加させるという意味で、国内外の生産を両立させる。

第2-6図 研究開発が国内生産に与える影響
〜研究開発の取組は国内生産を増加させる効果がある〜
資料:(財)中小企業総合研究機構、独立行政法人経済産業研究所
「中小企業海外活動実態調査」(2003年11月)
(注)1998〜2003年に海外生産数量が増加傾向の企業のうち、同期間において 国内生産数量を増加させた企業の割合を比較している。

(2)海外生産の成功の条件
○ 独資現地法人よりも、合弁現地法人の方がパートナーとの経営方針の相違等により、撤退する割合が高い。

3 高齢社会と中小企業
(1)中小企業の事業承継
○ 自営業主においては年々、高齢化が進んできている。被雇用者と比較すると10年以上高くなっている。
○ 承継後、従業員との関係やリーダーシップの発揮に苦労する経営者が多い。

第2-7図 承継後に苦労した内容
〜従業員に対する指導力の獲得に苦労する経営者が多い〜
資料:(株)東京商工リサーチ「後継者教育に関する実態調査」(2003年)
(注)複数回答のため合計は100を超える。

○ 事業を承継したばかりの経営者はそうでない経営者よりも、企業が今まで行っていなかった取組を開始する割合が高い。
○ 先代経営者の子供でも、他社での就業経験が有る経営者は無い経営者と比べて従業員数成長率は高くなる。ただし、事業を承継する意思がないまま他社の就業を経験しても、就業の効果は現れない。
○ 先代経営者の子供の場合、30歳代後半から40歳代で承継している経営者の過半数は適当な年齢で承継できたと答えている。

第2-8図 経営者の子供の承継適齢期
〜40歳代で承継した経営者は適当な年齢で承継したと答えている割合が高い〜
資料:(株)東京商工リサーチ「後継者教育に関する実態調査」(2003年)
(注)複数回答のため合計は100を超える。

(2)中小企業の廃業の実態
○ 経営者をやめた後の生活状況は、債務超過状態であるかどうかといった資産状態に大きく影響を受ける。資産超過のうちに廃業することが重要
○ 倒産者は再起業を志す者は多いものの、実現は困難。一方、廃業者は、再起業を志す者は少ないものの、実現する割合が高く、撤退時期を見極めることが重要

第2-9図 再起業実現率(倒産・廃業企業経営者別)
〜廃業企業経営者と倒産企業経営者では再起業の実現率に大きな差が見られる〜
資料:中小企業総合事業団「小規模企業経営者の引退に関する実態調査」(2003年)(社)中小企業研究所「事業再挑戦に関する実態調査」(2002年)
(注)それぞれ倒産時点、廃業時点の年齢を基準に集計した。
再起業実現率=すでに再起業している者/(すでに再起業している者+再起業する意志がある者)

4 中小企業の再生、新分野進出を支える金融
○ 従業員規模が小さいほど資金調達を借入金に依存している企業の割合が高く、また、自己資本比率が低い企業の割合が高い。
○ 全ての従業員規模において、思い通りに貸してもらえなかった企業の割合は減少しているものの、依然として従業員規模の小さな企業ほど貸してもらいにくい。
○ 従業員規模が小さな企業は、相対的に金利が高いものの、小規模においても金利の低い企業は多数存在する。

第2-10図 メインバンクから思い通りに貸してもらえなかった企業の割合(従業員規模別)
〜従業員規模が小さいほど、思い通りに貸してもらえなかった企業の割合は高い〜
資料:中小企業庁「企業金融環境実態調査」(2003年12月)
   中小企業庁「金融環境実態調査」(2002年11月)
   中小企業庁「企業資金調達環境実態調査」(2001年12月)
(注)ここでいう「思い通りに貸してもらえなかった」とは、アンケートにおいて、「最近1年間のメインバンクへの借入申込みについて、最も多かった対応はどうでしたか」という問に対して、申込みを拒絶や減額されたと回答した企業を指す。

(1)新しい試みと中小企業金融
○ 新しい事業活動を行う際の資金調達方法として金融機関借入を希望する企業において、従業員規模が小さい企業ほど金融機関借入の確保が困難

第2-11図 新しい事業活動のために金融機関借入を確保している企業の割合(従業員規模別)
〜従業員規模が大きい方が、金融機関借入を確保している企業の割合が高い〜
資料:中小企業庁「企業経営革新活動実態調査」(2001年12月)
(注)1 ここでの新しい事業活動とは「新商品開発・新技術開発」のことを指す。
(注)2 新しい事業活動のための資金調達手段として金融機関借入を希望している企業のみ集計した。

(2)中小企業の再生と金融
○ 債務超過企業における管理会計等に立脚した将来の具体的な経営計画の作成は、金融機関からの円滑な資金調達に効果がある

第2-12図 経営計画の具体性とメインバンクの対応
〜具体性の高い経営計画の作成は円滑な借入に効果がある可能性〜
資料:中小企業庁「企業金融環境実態調査」(2003年12月)
(注)ここで「計画の具体性が高い企業」とは、全て、もしくはほとんどの項目に具体的な数値があると回答した企業を、「経営計画の具体性が低い企業」とは、いくつかの項目には具体的数値がある、具体的な数値はほとんどないと回答した企業を指す。

ま  と  め
新たなパートナーとの連携へ向かって
−多様性がもたらす中小企業の更なる可能性−
○ 多様な中小企業は、経済社会の変化(IT革命、高齢化等)を活かし、
 ・ニューサービス・新しい就労形態(SOHO)
 ・公益サービスの新しい供給スタイル(地域貢献型事業)
 を創出するとともに、相互に新たな連携を進めて、経済社会の質的向上に貢献
○ 経済のグローバリゼーションは、中小企業にも国際展開の機会をもたらす。研究開発への取組や自社ブランドの利用に積極的な中小企業は、海外と国内での生産の分業をうまく行い、海外での生産だけでなく国内の生産も増加
○ 経営者の高齢化が進む中、円滑な事業承継のためには承継者本人の準備・承継後の新しい試み着手が重要
○ 廃業後の再起可能性を高めるためには、債務超過に陥る前に早期の見極めが重要
○ 中小企業の再生には、本業の売上げ増加とともに、管理会計導入等計数重視の経営が重要


◆ 中小企業は、IT等を活用しつつ、距離・業種を超えて、ものづくりからサービス・小売までを含めた幅広い連携やマーケティングと一体化した製品開発等を行うことにより、多様性が育む中小企業の潜在的創造力を顕現化させれば、更なる発展が可能


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