平成14年度版
中小企業白書の要点パートI

「まちの起業家」の時代へ 〜誕生、成長発展と国民経済の活性化〜


 中小企業庁は、4月26日に「平成14年度版中小企業白書」を発表しました。
 今回の白書では、(1)中小企業をめぐる現下の厳しい状況(景況、生産、倒産動向等)について分析、(2)中小企業の誕生期、発展成長期、廃業・倒産といったライフステージごとの課題を分析、(3)廃業、倒産という会社経営の「失敗」について白書として初めて分析。廃業した経営者の実態調査を通じ、再起の条件を模索、(4)金融機関が中小企業に対する資金供給で果たす役割を、金融機関の業態別に分析し、不良債権の存在が中小企業向け貸出に与える影響等について検証、(5)80年代以降欧米においてはいわば「まちの起業家」が多数輩出。それぞれのイノベーションや雇用への効果はささやかであったが、全体として経済活性化に大きく寄与。我が国においてもこうした状況の創出が課題である旨提示、の5点に特色があります。
 今月号及び来月号の2回に亘り、「平成14年度版中小企業白書」のポイントについて紹介します。  

第1部 最近の中小企業をめぐる動向
1 中小企業の全体的景気動向
 中小企業全体の景気は、製造業を中心に大幅かつ急速に悪化している。(図1)特に、ITを中心とした電気機械の落ち込みが激しく、また、一般機械など製造業全体の生産指数も下落している。(図2)





2 中小企業の資金繰り
 企業の資金繰り判断DI(好転―悪化)の推移を見ると、90年代以降、全規模企業及び中小企業共に悪化傾向が続いているが、特に、中小企業の資金繰りの悪化が著しく、98年の金融不況時に次ぐ高い水準となっている。(図3)
 資金繰りの苦しい理由としては、長引く売上の減少傾向が大きな影響を与えていることが挙げられる。



3 中小企業の倒産動向
 平成13年の中小企業の倒産件数は18,819件で史上3番目の高水準となっている。(図4)また、全企業の倒産件数は19,164件と1984年の20,841件に次いで史上2番目の高水準となっている。
 近年の傾向としては、老舗企業(業歴30年以上)の倒産の占める割合が増加しており、これまで比較的倒産の少なかった老舗企業の経営も厳しくなっている。(図5)





4 物価下落が中小企業に与える影響
 長期間にわたって物価が下落し続ける状態は、我が国経済にとってこれまで経験したことのないものであり、販売価格の低迷による収益性の悪化等、中小企業経営に与える影響が懸念される。(図6)


5 製造業の海外進出進展(空洞化)が中小製造業に与える影響
 製造業の海外現地法人の海外生産比率を見ると、年々上昇傾向にあり、また海外現地法人の売上高も上昇傾向にある。(図7、8)
「空洞化」の影響を受け、製造事業所数は急速に減少しており、特に工業集積地域(東京都大田区、大阪府東大阪市等)での減少が顕著である。(図9)





第2部 誕生、発展・成長する存在としての中小企業
1 中小企業の誕生
(1)創業希望者の推移
 創業希望者は、総務省の「就業構造基本調査」によれば、1977年以降、常に100万人を越えており、開業率が現在よりも高かった高度成長期の1960年代の水準を上回っており、創業希望者が数多く存在していることを示している。(図10)


(2)創業者への制約となるもの
 創業希望者が数多く存在しているものの、創業実現率が上昇しない原因は、第一に資金面の問題が大きく、次いでマーケティング面や人材そして制度のの問題が挙げられる。(図11)


(3)開業率の動向
 開業率は、総務省の「事業所・企業統計調査」によれば、高度成長期の1960年代以降高い水準を保っていたが、1980年代に入って、低下し、1989年以降、開業率は廃業率を下回る水準となっている。
 最新の調査時点では開業率が増加しているもののその幅はわずかであり、他方、この時期、廃業率の上昇は顕著となっている。(図12)


2 中小企業の発展成長と経営革新
(1)法人にも存在する「老化」現象
 経済産業省の「企業活動基本調査」を基に企業規模・年齢別に常時従業者数増加率を見ると、企業規模に関係なく、企業年齢が高いほど企業の成長性は低下し、また、総じてパフォーマンスは安定してくることが示されている。(図13)


(2)経営革新(イノベーション)の取組は若返りを促進
 中小企業庁の「企業経営革新活動実態調査」を基に経営革新活動に取り組んでいる企業と取り組んでいない企業を比較すると、前者の方が後者より常時従業者数増加率が高くなっている。経営革新を行うことにより、成長力を持続させることが可能であり、「若返り」の薬といえる。(図14)


(3)経営革新の取組状況
 中小企業の58.0%が経営革新に取り組んでおり、規模が大きな企業ほど経営革新活動に積極的に取り組んでいる。(図15)
 その取組内容は、企業規模にかかわらず、「新商品開発」に重点を置く企業の割合が多くなっている。また、小規模企業においては「多角化」「既存製品の改良」への取組割合が高く、「社内体制における新体制の導入」については低い割合となっている点に特徴がある。(図16)




 多岐にわたる経営革新の取組であるが、その取組を成功させてきた企業には、(1)自分の得意な分野に立脚(コア・コンピタンス重視)、(2)綿密な事前調査・検討、という共通要素が見いだせる。

(4)意外に健闘する中小企業の研究開発
 中小企業は大企業に比べ研究開発活動への取組が弱いことは、全従業者数に占める研究開発関連従業者数割合が大企業に比べ低く、その差は拡大傾向にあることからも実態を証明している。(図17)
 しかしながら、中小企業では製造に従事するものや社長自身が研究開発に取り組むなど、研究開発活動に多くの専従者を割くことが困難な状況を、兼務者の活用により克服しようとしている。(図18)このことから、中小企業は限られた経営資源の中で、懸命に研究開発に取り組んでいるのであり、一概に研究開発活動への取組が弱いとは言い難い。
 また、中小企業は大企業では取り組みにくいハイリスクの研究開発をも積極的に実施しており、中小企業と大企業の間には、活動への取組方や重点の違いが存在している。(図19)



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(5)研究開発の試みが高める中小企業のパフォーマンス
 研究開発への取組から企業のパフォーマンスが受ける影響は、中小企業の方が大企業よりも大きく、また、研究開発活動に取り組んでいる企業では、経営革新活動への取組割合も高くなっているなど、研究開発活動は直接的・間接的に企業の成長に大きな影響を与えている。(図20,21)

図20 研究開発活動が企業の成長に与える影響
〜回帰分析結果より〜
[中小企業] Adj R2=0.003
推定係数 標準誤差 有意水準
定数項 ▲0.056 0.003 ***
従業員一人当たり研究開発費 0.057 0.012 ***
サンプル数 7,548
***=1%有意水準 **=5%有意水準 *1%=有意水準
 
[大企業] Adj R2=0.002
推定係数 標準誤差 有意水準
定数項 ▲0.120 0.007 ***
従業員一人当たり研究開発費 0.029 0.011 ***
サンプル数 7,548
***=1%有意水準 **=5%有意水準 *1%=有意水準


(6)産学連携への取組
 中小企業は大企業に比べ研究体制の整備の面で十分でないことから、研究開発においては外部資源の活用が重要となる。その身近な外部資源である大学との連携への取組は、ここ数年活発になってきているが、中小企業にあっては、まだ関心があっても取組に至れないケースが多く見られる。(図22)


 一方の産学連携の主体である大学側の取組状況は、以前から活発に取り組んでいる大学も49.1%あり、さらに、ここ1〜3年の間に活発化してきた大学も36.7%となっており、大学全体として以前にも増して積極的に取り組んでいる。(図23)


(7)産学連携が企業パフォーマンスに与える効果
 産学連携を実施した企業は、取り組んでいない企業よりも従業者数の増加率が高くなっており、産学連携は企業の成長にプラスの効果をもたらしている。(図24)


(8)中小企業で活発な事業転換
 経済産業省の「工業統計表」の再編加工データから業種転換率の推移をみると、中小企業は大企業に比して高い水準で推移しており、活発であると言える。(図25)
 事業転換先は、販路をいかせる分野及び技術をいかせる分野への転換が多くなっている。以前は技術がトップであったのが販路重視に変化しており、企業にとって販路の確保が以前にも増して大きな課題となっている。(図26)




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